研究概要
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研究概要

天然素材工学研究室は、微生物(生産物も含む)や植物、食品や食品加工廃棄物などから、独自のスクリーニング系を用いて、食品、化粧品、医療、化成品に利用できる天然物質を見出し、工業化することを目標としている。この研究室の夢は、研究室で開発した素材で、医食住において多くの人々に安らぎ、楽しみなどを与えることである。


研究グループとして以下の4つのグループに分かれている。

Four research groups

1.氷結晶制御物質に関する研究

低温環境下は生物にとって20℃以下のことである。年間を通してこの温度域に晒される地域は、現地球上の80%以上となっている。哺乳類のような恒温性動物は無関係だが、変温性動物は、必ずその温度変化とともに、体内代謝を変化させることによって、低温に適応するための体内応答を起こしている。

2. 天然素材からの食品物性制御物質に関する研究

おいしいものを食べるとホッとし、元気が出て、幸せを感じます。このおいしさは、人間の食の嗜好は人それぞれであるが、このおいしさに対する感性は大きく3つの要素からなるとされている。その一つが舌で感じる味(味覚)、鼻で感じる匂い(嗅覚)と物理的な刺激で感じるテクスチャーである。

3.天然素材からの機能性食品および化粧品素材に関する研究

食品にはおいしさに影響する成分以外に、病気予防や老化防止の助けになる成分が微量ながら色々と含まれており、これらを抽出や分離して、より効果的に摂取できるように開発されたものが一般的に機能性食品とされている。「健康食品」と同様に法的に定義された用語ではなく、機能を表示することは規制されている。

4.液体・固体培養によるラン藻・地衣菌に関する研究

地衣類は、真菌類(子嚢菌類、不完全菌類)と藻類(緑藻、ラン藻)の共生体である。菌類は藻類に住処を与え、藻類は光合成によって栄養素を合成し、菌類に与えている。地衣類はその形態から大きく葉状地衣類、樹状地衣類、痂状地衣類に分けられる

1.氷結晶制御物質に関する研究

低温環境下は生物にとって20℃以下のことである。年間を通してこの温度域に晒される地域は、現地球上の80%以上となっている。哺乳類のような恒温性動物は無関係だが、変温性動物は、必ずその温度変化とともに、体内代謝を変化させることによって、低温に適応するための体内応答を起こしている。

この低温環境下のうち、さらに凍結する状態は生物にとっては死活問題となる。多くの生物は、この凍結から身を守るために、様々な適応機構を進化の過程で獲得していった。例えば、越冬する昆虫の幼虫などは、細胞内に糖(グルコースやトレハロースなど)やグリセロールのようなポリオールを大量に蓄積し、体内を凝固点降下させることによって耐凍性を獲得している。このメカニズムは細胞内凍結を避ける戦略の一つであるが、細胞外凍結による氷結晶形成によって起きる細胞破壊も生物にとっては脅威である。この細胞外凍結を回避する手段の一つとして、細胞外に不凍タンパク質を生産する戦略がある。しかしながら、氷結晶の発生から成長を制御する過程に関わる物質である氷結晶制御物質は不凍タンパク質だけでなく、多様な低温環境下で生育している生物が、別の機能を有した多様な氷結晶制御物質も生産している。

この氷結晶制御物質は、氷結晶の核形成および成長に関連した物質の総称である。図1に示したように、この物質は氷の核形成を促進する氷核タンパク質、核形成を抑制する過冷却促進物質(抗氷核活性物質)、形成した氷結晶の成長を抑制する不凍タンパク質・多糖、長期間の冷凍時に起きる氷の昇華を抑制する昇華抑制物質である。

氷結晶制御物質に関する研究

現在、天然素材工学研究室では、氷結晶成長を抑制する不凍タンパク質・多糖の研究、核形成を抑制する過冷却促進物質(抗氷核活性物質)の研究、氷昇華現象の評価系の確立とその評価などの研究を行っている。

2. 天然素材からの食品物性制御物質に関する研究

おいしいものを食べるとホッとし、元気が出て、幸せを感じます。このおいしさは、人間の食の嗜好は人それぞれであるが、このおいしさに対する感性は大きく3つの要素からなるとされている。その一つが舌で感じる味(味覚)、鼻で感じる匂い(嗅覚)と物理的な刺激で感じるテクスチャーである。

近年、感性を新しい価値として広く社会に浸透させ、「感性価値」を生み出して商品化することが要望されている。食においても、(社)食感性コミュニケーションズ(http://www.foodkansei.or.jp/)の相良氏は、食感性工学を提唱しており、食のおいしさは、五感とそのコミュニケーションを総合して得られるものでと述べている(図2)。

天然素材からの食品物性制御物質に関する説明

図2.食嗜好の多層構造 参考;相良泰行 ‘食感性工学のパラダイムと機能を探る’  頁114-117 おいしさの科学シリーズ vol.3 出版社㈱ エヌ・ティー・エス (2012年)

 

この感性工学のうち、五感に関係なく食品のおいしさに影響しているのはテクスチャーである。このテクスチャーはおいしさにも影響するが、高齢者社会における介護食、嚥下食において重要な要因になっている。このテクスチャーを制御することは、食品の物性を制御することになり、食品のおいしさとともに、品質にも影響する。

研究室では、この食品物性に影響する増粘多糖類の粘性などを制御したりする研究、食品の乳化に関係する素材に関する研究や、食品の紛体やタンパク質に接着するタンパク質に関する研究を行っている。

 

これまでに手掛けた食品性制御物質に関する研究

3. 天然素材からの機能性食品および化粧品素材に関する研究

食品にはおいしさに影響する成分以外に、病気予防や老化防止の助けになる成分が微量ながら色々と含まれており、これらを抽出や分離して、より効果的に摂取できるように開発されたものが一般的に機能性食品とされている。「健康食品」と同様に法的に定義された用語ではなく、機能を表示することは規制されている。

機能性食品は医薬品でないため具体的な効能効果はうたえないが、国の審査を経た上で食品に機能表示を認める「特定保健用食品(トクホ)」制度が1991年に作られた。2001年には「栄養機能食品」も新設され、両者を合わせて「保健機能食品」と呼んでいる。
トクホは、体調調節機能を持つ成分を含み、「おなかの調子を整える」「血圧の高い方に」といった特定の保健の用途を表示できる。食品ごとに審査され、表示できる内容が許可されている。しかしながら、その取得には高額な研究費などが必要である。栄養機能食品は、規格基準に適合すれば許可申請は不要で、栄養補給のための食品に「カルシウムは歯や骨の形成に必要な栄養素です」といった栄養成分の機能表示ができる。保健機能食品以外には、食品の持つ効果や機能を表示することはできない。

2015年4月からの新制度は、野菜や魚や肉などの生鮮品のほか、茶やそばなどの加工食品、サプリメントなど、原則として全ての食品が対象になる。この制度でも、病気の治療・予防効果の表示は認められないが、健康の維持・増進の範囲に限って「機能性表示」が可能になり、「肝臓の働きを助けます」「目の健康をサポートします」「鼻の調子を整えます」といった表現ができるようになる。認可が要らないということは、企業の自己責任で表示するということとなり、企業は販売する前に、科学的根拠を立証した論文や製品情報などを消費者庁に届け出ればよい。

本研究室では、食品加工および農産物などからエキスを抽出し、機能性食品素材エキスの研究を行っている。

一方、化粧品素材においては、近年の世界的な環境意識の向上により、消費者の意識は天然志向、安全性志向にあると考えている。自然由来、オーガニック原料を使用した化粧品が消費者に受け入れられてきている。

そこで、本研究室では、食品素材からの化粧品素材の検索などを行い、美白剤、オイルゲル化剤、乳化剤、基礎化粧品素材など幅広い素材の研究を進めている。

4. 液体・固体培養によるラン藻・地衣菌培養方法に関する研究

地衣類は、真菌類(子嚢菌類、不完全菌類)と藻類(緑藻、ラン藻)の共生体である。菌類は藻類に住処を与え、藻類は光合成によって栄養素を合成し、菌類に与えている。地衣類はその形態から大きく葉状地衣類、樹状地衣類、痂状地衣類に分けられる

図.ヘリトリゴケ(痂状)

図.ヘリトリゴケ(痂状)


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図.ヒメレンゲゴケ(樹状)

地衣類は自然界での生育も遅く、1年間に数cmほどである。また、地衣類から分離した地衣菌も同じ子嚢菌類である麹などと比べて非常に生育が遅く、液体培養でも数週間で、塊になって成長するため生育量も少ない。また、平板上においても生育が遅く、塊状で2ヶ月ほどかかる。

この生育の遅さは、地衣成分の工業的利用の妨げになっている。

地衣類は、自然界ではほとんど乾いた状態で存在している。降雨や朝露などによって湿状態になり、乾燥へと移行する間に、光合成で栄養素を蓄積し、乾燥によってそれらを濃縮している。その濃縮された栄養素を地衣菌が利用して、増殖している。この現象を再現すればより効果的に生育できると考え、現在、固体培養および液体培養の組み合わせや地衣成分を添加した培地での生育状況などの研究を進めている。この培養技術により、医薬品のリード化合物となる地衣成分の生産も可能となる。

一方、シアノバクテリアであるラン藻類は、原始地球において、最初に光合成生物として発生し、地球にオゾン層構築のための酸素を供給した生物である。そのラン藻類のうち、陸生および水生に生息するネンジュモ属(Nostoc)は、一列の細胞からなる分岐しない糸状体が共通のゲル状内で多数絡み合って藻塊を形成している。Nosoc属には食用のものもあり、石クラゲ(図)は、自然界において吸水性ポリマーを生産し、ブヨブヨ状に生息している。

現在、研究室では、Nostoc属の研究室レベルでの培養方法の確立と、その生産されている吸水性ポリマー生産のための培養方法の構築を行っている。

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図.ウメキノゴケ(葉状)