これまでに手掛けた食品制御物質に関する研究

1.乳化剤について

微生物は、様々なストレスから身を守るために、あるいは油脂類を栄養源とするために、菌体外にバイオサーファクタント(界面活性剤)を生産していると考えられている。 微生物は、様々なストレスから身を守るために、あるいは油脂類を栄養源とするために、菌体外にバイオサーファクタント(界面活性剤)を生産していると考えられている。
バイオサーファクタントが、既存の界面活性剤や生体系脂質にはみられない高度な分子集合能や様々な生理活性をもつことが判明している。 バイオサーファクタントが、既存の界面活性剤や生体系脂質にはみられない高度な分子集合能や様々な生理活性をもつことが判明している。
そのため、バイオサーファクタントを食品および化粧品などの新素材となる研究が行われている。バイオサーファクタントの特徴は、低濃度で高い界面活性作用、緩やかで持続性のある作用、優れた分子集合能などであり、多彩な生理活性を示す場合もある。 そのため、バイオサーファクタントを食品および化粧品などの新素材となる研究が行われている。バイオサーファクタントの特徴は、低濃度で高い界面活性作用、緩やかで持続性のある作用、優れた分子集合能などであり、多彩な生理活性を示す場合もある。
実際に現在産業界で利用されているバイオサーファクタントは、糖脂質型とリポペプチド型のみである。前者の代表的なものはソホロリピッドであり、後者の代表的なものは納豆菌の近縁株が生産するサーファクチンである。しかしながら、両者とも洗剤や医薬部外品であり、コストに合った食品用途用のサーファクタントはないのが現状である。 実際に現在産業界で利用されているバイオサーファクタントは、糖脂質型とリポペプチド型のみである。前者の代表的なものはソホロリピッドであり、後者の代表的なものは納豆菌の近縁株が生産するサーファクチンである。しかしながら、両者とも洗剤や医薬部外品であり、コストに合った食品用途用のサーファクタントはないのが現状である。
我々の研究室では、自然界あるいは研究室レベルでの培養における微生物の挙動に着目し、新たなバイオサーファクタントの研究を始めた。 我々の研究室では、自然界あるいは研究室レベルでの培養における微生物の挙動に着目し、新たなバイオサーファクタントの研究を始めた。

  1. まず初めに、赤色酵母に着目した。赤色酵母が作る赤色色素(カロテノイド)は細胞状態では安定であるが、細胞外あるいは抽出されると不安定になり、退色してしまう。そこで、赤色色素を安定化させる物質が細胞壁中に存在すると仮定して研究に着手した(Kawahara H et al, Biocon. Sci., 18, 21-28 2013)。アスタキサンチンの分散化を指標にして検索したところ、酵母培養した上澄み液中に、アスタキサンチンの安定化させる物質があることを明らかにした(図)。精製によって、分子量730,000であり、糖とタンパク質の比は9:1で、マンノース、ガラクトース、グルコースを構成糖としていた。この糖タンパク質は乳化作用もあり、界面活性作用もあることが判明している(第4950511号)。
    糖タンパク質(a)とサーファクチン(b)のアスタキサンチン安定化の比較

    糖タンパク質(a)とサーファクチン(b)のアスタキサンチン安定化の比較

    この結果は、S. cerevisiaeの菌体の酵素処理液(ザイモリアーゼ、β-グルカナーゼ)がバイオサーファクタントとなり、マンノプロテインがその物質であることを報告されている情報(Cameron DR et al, Appl. Environ. Microbiol., 54, 1420-1425 1988)と類似でしていた。

  2. そこで、我々の研究室でも清酒酵母を幅広く検索したところ、協会10号の1週間培養上澄み液中にバイオサーファクタント(マンノプロテイン)を生産していることを明らかにした(第5273633号)。この乳化活性の発現のメカニズムと構造との相関関係については現在も研究中である。さらに、この結果を基に、酒粕からバイオサーファクタントの検索を行った。その結果、従来の醸造方法で得られる酒粕(板粕)よりも、酵素などで効率を上げる醸造方法で得られる酒粕(バラ粕)の方が、バイオサーファクタント含量が高いことが明らかとなった。このサーファクタントを用いると右図に示した ように、酒粕エキスを用いたマヨドレは冷凍耐性を持ち、冷解凍後も水と油は分離しないことがわかった。現在、共同研究先であった大関㈱が商品化に向けて検討を行っている。
    酒粕SFマヨドレの冷凍耐性

    酒粕SFマヨドレの冷凍耐性

    食品添加物において、増粘多糖類は、ゲル化以外に、増粘性、保水性、乳化性、起泡性など多様な機能の付与に用いられている。増粘多糖類およびゲル化剤の日本国内市場の販売割合は左図に示している。これまでに、冷凍食品の品質保持剤として不凍タンパク質などが実用化される前には、いくつかの増粘多糖類のうち、グアーガムやローカストビーンガムが氷結晶の微細化のために氷菓子に利用されてきた。
    食品添加物において、増粘多糖類は、ゲル化以外に、増粘性、保水性、乳化性、起泡性など多様な機能の付与に用いられている。増粘多糖類およびゲル化剤の日本国内市場の販売割合は左図に示している。これまでに、冷凍食品の品質保持剤として不凍タンパク質などが実用化される前には、いくつかの増粘多糖類のうち、グアーガムやローカストビーンガムが氷結晶の微細化のために氷菓子に利用されてきた。

    日本における増粘多糖類

    日本における増粘多糖類

     

  3. そこで、ローカストビーンガムの機能性を改変するために、食品酵母を用いてローカストビーンガムを炭素源とした培地での発酵試験を行った。その結果、トルラ酵母Candida utilisを唯一の炭素源としてローカストビーンガムを培養すると、低分子化したローカストビーンガムを蓄積させることができた。低分子化したローカストビーンガムは、分子量約30万から約12万となり、ガラクトースとマンノースの構成比が1:4から、1:2.85に変化した多糖となった。この低分子化したローカストビーンガムは従来のローカストビーンガムより耐酸性、冷凍耐性がゲル化において向上していた。κ-カラギーナンと混合して調製したゼリーが-20℃で保存した場合、従来のゼリーは崩壊しているが、低分子化ものはそのままで冷凍耐性を付与することが判明した。また、他のゲルにおいても幅広いpHでゲル化し、崩壊性のよい嚥下補助食品を調製することに成功した。また、低分子化したローカストビーンガムは、今後低分子化したローカストビーンガムを安価に製造できる技術が求められる。(第5416882号)この特許権は現在、関西大学単独であり、工業化に興味ある企業の方は是非チャレンジしてほしい。
    低分子化LBGゲルの冷凍耐性

    低分子化LBGゲルの冷凍耐性

 2.増粘改良剤について

多くの増粘多糖類が食品添加物として利用されているが、その粘性は使用量の増減で調整するか、溶液中の無機塩、特にカリウムイオンなどで変化させる。しかしながら、ほんの少しの粘性を付けるのに使用する場合、増粘多糖類を均一に懸濁するのは困難な場合が多い。そこで、この粘性を調整する簡易な方法について検討を行った。硫酸アンモニウムと単糖類、特にガラクトースをpH 5.0でオートクレーブ処理(121℃、20分)処理する。この処理液を濃縮後に、κ-カラギーナンに1%(重量)となるように添加する。添加後に4日間、30℃で振盪処理することによりκ―カラギーナンの物性が変化する。つまり、分子量160,000の低分子化されたκ‐カラギーナンの割合が増え、増粘性も低下し、処理したκ‐カラギーナンの扱いやすさが増大する(第5658929号)。

3.ゲル化剤

マンノプロテインのように糖タンパク質の一部は界面活性効果があり、色んな機能性を持っている。また、低分子化したローカストビーンガムは、むき出しになったマンナン鎖どうしが水素結合することにより、分子内での疎水性度の違いにより、両親媒性となり、界面活性効果がある。そこで、我々の研究室では、コーヒー粕から熱水抽出して得られる過冷却促進物質の残渣から、コーヒーマンナンを分離し、その特徴を明らかにした。一般に、マンナン多糖は中性領域での熱水抽出では抽出できない。さらに熱水抽出などで、不必要な多糖を除いた後、強アルカリ性で熱水抽出を行った。その結果、ガラクトースとマンノースとアラビノースの比が6:12:1となる多糖を分離した。この多糖はケロシンを乳化でき、使用量
(1:5以上)によっては、ゲル化させる(図)ことが判明した。さらに化粧品用のシリコンオイルもゲル化できるので、新たな化粧品素材としても期待できる(特許第6055683号)。

コーヒーマンナンでゲル化したケロシン

コーヒーマンナンでゲル化したケロシン